木が伐れない樵の業務日誌

新潟県村上市にある民間の林業会社に勤めている30代男が林業についてつらつら書いてます。

林業ってどんな仕事?~大学で学んだコトがどう活かされる?~ その2(前半)

 林業ってどんな仕事?シリーズその2です。

その2はちょっと長くなってしまったので、2つに分けまーす。

ではどうぞ。 

その1はこちら↓ 

kigakirenaikikori.hatenablog.jp

林業職を分解してみよう。その仕事はどうやって回っている?

 

私が大学生の時、林業関連の授業では育林技術や効率的な丸太の生産方法、木材の利用などについて教わりました。

ですが、授業の内容がどの様に仕事や社会に活かされるのかイメージできていませんでした。

林業にはどんなプレイヤーがいて、どうやってお金が回り仕事として成り立っているのだろう?

そのためにはどんな技能や知識が必要になるのだろう。

仕事に関する具体的な部分についても知りたかったのかもしれません。

 

さて今回は「林業という仕事がビジネスとしてどう回っているのか」について書いていこうと思います。

ところで、林業と言ってもその範囲は幅広く、調べてみると山菜収穫や狩猟も林業という枠組みに含められていたりします(参考:日本標準産業分類 総務省)。

今回は丸太を生産する(素材生産)を目的とした「山林づくりから伐採までを行う仕事」を林業として話を進めていきたいと思います。

 まずは、林業という仕事をお金の流れ方別に

「育林業「素材生産業」そして林業サービス業」

の3つに分解して見ていきたいと思います。

 

林業を分解してみよう 

①育林業 

 森林所有者自ら、所有している森林を仕立て、整備する仕事です。

 あくまで主伐で収益を上げるための下準備になります。

 最近では、自伐林業と言われているものがこれに当たります。

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②素材生産業

 森林所有者から立木(立ったまま、生きている状態の木)を買い取り、伐採し、丸太(素材)を生産する仕事です。

 主伐(最終的な収穫の段階)専門の業者ということになります。

 

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林業サービス業

 森林の整備・管理等を森林所有者ではない者に委託して行うものです。

 これは、主に丸太など物に対してではなく森林整備・管理を行うサービスに対して対 価が支払われます。

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丸太が売れて回る林業ビジネス

植栽した苗木を丸太として生産できる品質やサイズの立木に仕立てるまでが育林業であり、その立木を買い取り、丸太を生産するのが素材生産業に当たります。

収入源となるのは、育林業では立木の売上(副収入として間伐材の売上)、素材生産業では丸太の売上になります。もちろん育林業から素材生産業を一貫して行っている人もいます。 

林業と素材生産業で売るものが異なりましたが、林業全体で見ると収入源の根源は丸太の売上となります。

ですので、林業の基本的なビジネスとしての仕組みは、「(先に)お金と労力をかけて木を仕立て・整備をして、(後から)丸太の売上で経費の回収+α(利益)」を得るという形になります。

しかし、現在は丸太の価格が下がり、この仕立てや整備の経費が回収できない状態になっており、ビジネスとしての仕組みが破綻してしまっています。 

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そんな破綻した仕組みの中でさらに経費をかけて仕立て、整備する人は少なく、整備不足の人工林というものが日本に広がっていきました。

しかし、そんな中でもこれから掛かる経費だけでも負担を軽くし、整備不足の林をなくすために補助金制度が活用されるようになりました。

そこで、もう一つの林業サービス業の重要性がより高まってくることになります。

 

「地域の山見守り隊」それが林業サービス業

この林業サービス業は、補助金を活用して山の管理を進め整備不足の解消に取り組むことができます。

先ほど、整備が進まない話をしましたが、その原因は他にもいくつか挙げられます。 

主な原因は3つあり、1つ目は、先ほど述べた収入が経費に見合わず、所有者の経費負担が増加したこと、2つ目は、所有者の高齢化や地域外への移住などにより管理者がいないこと、そして3つ目は、山の所在や境界が不明等、所有林についての情報不足が挙げられます。

 

①経費負担の増加

②管理者の不在

③山林情報の不足

 

これらに対し、補助金林業サービス業の組み合わせによりこれらの不足を解消することができます。

補助金の活用は経費負担の軽減に、専門業者への管理の委託では管理者と情報の不足の解消に向け取り組むとこができます。

 

また、補助金を活用するためには専門的な知識や煩雑な事務手続きが必要であるなど所有者自身で活用するにはハードルが高いことも委託した方が良い理由の一つです。

また、林業サービス業者は様々な所有者の山を管理することになりますが、一つ一つの山を個々に管理するのはとても非効率になります。

それよりも、周辺一帯の山を一括で管理した方がコストを抑えられます。

たとえば、山の管理のために道を付ける場合、所有者ごとに道を入れるよりも、いくつかの所有者の山を経由できるように一本の道を入れた方が道を付ける経費も、各山に行き来する時間も削減することができます。

 

この様な理由より、所有者個々に管理するよりも林業に関する専門知識を持った、「地域の山を見守る」ことができる人に一括管理を任せる、そういった需要が高まってきています。

 

そしてこの林業サービス業には「森林施業プランナー」という重要なプレイヤーがいるのです。

 

続く・・・